共同不法行為の損害賠償請求とは?

 

 

共同不法行為損害倍諸請求には

どのようなケースがありますか?

 

 

民法719条では、共同不法行為によって他人に損害を与えたときは、共同行為中のいずれが、その損害を加えたかを知ることができないときも、連帯でその賠償責任を負うことが規定されています。現代社会は複雑に入り組んでいることから、損害の原因に、多くの人々や企業が関与しているケースがあります。

 

例えば、かつてコンビナートを形成する多数の企業が有害物質を含む煤煙を排出し、多数の喘息患者を出した四日市喘息などはその典型的なものといえます。

 

また、2台の自動車が、双方の運転手の故意または過失によって事故を起こし、その巻き添えで通行人がケガをしたようなケースでは、どの加害者の行為から損害が発生したのかを特定することは困難です。

 

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このような場合に、上記の共同不法行為が認められれば、そのような損害に対して訴えを起こすことが可能になります。

 

 

刑法と民法での違いは?

 

刑法では、それぞれの加害者の間には共謀などの要件が求められますが、民法ではその必要はありません。つまり、それぞれの単独行為に対して、損害賠償を請求できるということです。

 

 

スキーによる事故で、

治療費や休業補償は請求できますか?

 

例えば、次のようなケースです。

■XさんとYさんは一緒にスキーに行った。
■スキーの上級者であるXさんは、コースからはずれて滑っていたが、林から出たところで、一般向けのコースで滑っていたBさんと衝突してしまい、両足骨折という大ケガを負ってしまった。
■Yさんは初心者で、衝突したときもスピードを出しすぎていて、制御できずにいる状態だったが、かすり傷ひとつなかった。

 

このようなケースで、XさんはBさんに、治療費や入院して仕事を休んだ休業補償を請求することができるのでしょうか?

 

これについては、Yさんに過失があったのかどうかによって、その責任の所在が変わってきます。つまり、Yさんがスピードを出しすぎず、前方をよく見て滑っていたら、衝突は不可抗力であり、不法行為は成立せず、損害賠償の責任はないといえます。

 

しかしながら、上記のケースですと、Yさんはスピードを出しすぎてXさんをよけることができなかったわけですから、責任があるといえます。

 

 

過失相殺については?

 

ただし、Xさんのほうにも過失はあります。というのは、Xさんは一般のスキーヤーが通らない林の中からコースに出て行ったわけであり、上から滑ってきた者にとっては、予想外の出来事であったといえるからです。

 

よって、被害者であるXさんにも過失があるのに、Yさんだけに責任を負わせるのは不公平なので、損害賠償額はXさんの過失の分だけ減額されます。これが民法722条の「過失相殺」です。

 

 

ボクシングなどの場合はどうなるのですか?

 

スポーツの最中に起こった事故といっても、ボクシングなど互いに殴り合う競技においては、たとえ相手にケガをさせた場合でも、損害賠償の対象にはなりません。これは、反則行為があれば別ですが、ボクシングの場合は、殴ることが競技そのものだからです。

 

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