慰謝料の過失相殺は
交通事故でも適用されるのですか?
例えば、車を運転していたところ、泥酔して寝ていた男が車道の真ん中にいたので、あわててハンドルを切ったものの、男をはねてケガをさせてしまったようなケースです。落ち度のない歩行者をはねてしまったのとは違い、車道の真ん中に寝ていた男をはねてしまったとしても、損害賠償額は減額されないのでしょうか?
これについては、上記のような事故と、歩道を歩いていた何の落ち度のない歩行者を暴走車がはねたような事故とを同じように損害賠償するのは不公平です。なので、被害者に過失があった場合には、それを考慮して、損害賠償額のうち妥当な割合の額を減らすことになります。
どれくらい減額されるのですか?
何割減額されるのかについては、被害者の過失によって様々ですが、交通事故の場合は、それまでの事故の例を分析、定型化したかなり細かい基準があります。
例えば、上記の事故のように、歩行者が道路上に寝ていたようなケースでは、昼間か夜間か、発見しやすい状態であったかどうかを考慮して、歩行者に20〜50%の過失があるとされます。
また、歩行者と直進車が横断歩道上で接触した事故の場合には、歩行者の信号が青で直進車の信号が赤だったら、100%直進車の責任であり、当然ですが過失相殺による減額はありません。
反対に、歩行者が赤信号なのに横断歩道を渡っていて、直進車の信号が青だった場合には、歩行者に70%程度の過失があるとされます。
とはいえ、このような割合はあくまでも目安であり、実際には、歩行者が子供や老人であったか、直進車がスピード違反をしていなかったかなどの諸般の事情を考慮した上で、最終的な過失相殺の割合が決定されます。
盗難車による事故では、
車の持ち主の賠償責任も問われるのですか?
車を盗むような人物の場合、賠償するだけの資力がないことがよくあります。自動車損害賠償保障法第3条では「運行供用者責任」といって、車の持ち主は、自分が運行させた車の事故について責任を負うことになっています。
これは、車の持ち主は、その車がどのように使用されるかについてコントロールし、支持できる立場にあるからです。
これを被害者の側から見ますと、持ち主が車の管理をきちんとしていなかったから事故が起こったわけで、持ち主の過失を立証し、自賠法第3条、民法709条の不法行為責任により、車の持ち主に損害賠償を請求するということになります。
ただし、上記のように車を盗まれた場合は、車をコントロールできなくなっていますので、減速として運行供用車責任は問われません。
車の持ち主が賠償責任を負ったケースは?
かつて車の所有者が賠償責任を負ったケースとしては、エンジン・キーを差し込み、ドアに施錠をしないまま路上に放置していた車が盗まれ、事故を起こしたというものがあります。また、路上ではなくても、人の出入りが自由な空き地に放置していた場合も責任があるとされます。
なお、裁判所は、次のような様々な要素を判断した上で結論を出しますので、車から離れる際は、必ず施錠し、万が一盗まれたらすぐに被害届けを出しておくことが大切です。
■カギをかけていたかどうか
■車を置いていた場所
■盗難されてから事故までの時間・距離
■被害届けなど事後の措置