上司に罵倒され鬱病になってしまった場合は?
上司に罵倒され鬱病(うつびょう)になってしまったような場合、上司を相手取って損害賠償を請求できるのでしょうか?
民事にも名誉毀損の責任がありますので、精神的な傷をこうむった場合には、損害賠償を請求することができます。なので、上司がもし自身の名誉を傷つけ、侮辱するような言動を取っていたら、まずはその証拠をそろえておくようにしましょう。
それが原因で会社を辞めたのであれば、絶たれた収入分を請求できますし、鬱病になって病院に通ったのであれば、治療費や通院にかかった交通費も請求できるからです。
どのように証拠をそろえたらよいのでしょうか?
上司のいじめに悩まされている人も多いと思いますが、会社内部では、とにかくトラブルには関わりたくないという人も多いので、証拠をそろえるのは難しいかもしれません。
しかしながら、この場合は、相手が同僚の前で罵倒しているわけですから、証言者が得られる可能性もあります。具体的に上司のどのような言動が問題になるのかですが、一般的に、民事訴訟の対象となる名誉毀損とは社会的名誉のことをいいますので、単なる主観的名誉感情の侵害は含まれません。
なので、例えば、「あなたは行動が遅いよ」と言った程度ですと、個人の名誉が傷つくだけですが、「幼稚園からやり直せ」とまで言った場合には、これは社会的名誉を傷つけたということになります。
これは、その人の社会的評価を害するからであり、しかも、こうした発言を多くの人の面前で言われた場合には、いっそう大きな精神的ダメージとなるからです。
親切心で迷子の面倒をみても、
ケガをさせたら損害賠償の対象になるの?
例えば、迷子がいて、名前やお母さんがどこにいるのかなどを聞いても泣くばかり。仕方ないので交番に連れて行こうと手を引いて歩き出したところ、子供がつまずいて転んでしまい、ケガをしてしまったようなケースです。
親切心で手を貸してあげたのに、ケガをさせたら損害賠償させられるというのはあんまりだと思われるかもしれません。しかしながら、迷子を交番に連れて行こうとすることは、民法では「義務なくして他人のために事務の管理を始めたる者」に該当します。
つまり、誰から頼まれたわけでもないのに事務管理を始めた者は、その内容から見て、ふだん自分が尽くすのと同じだけの注意義務を尽くして、その者の利益になるような方法で(民法697条)最後までやりとげる義務があるのです。
よって、重大な過失により迷子にケガをさせたりした場合には、損害賠償をしなければならないということになります(民法698条)。とはいえ、上記のような迷子がつまずいて転んだというのは、重大な過失とはいえませんので、損害賠償を求められることはないと思われます。
では、途中で放り出した場合はどうなるのですか?
途中で放り出したり、危険な状態で捨ておいたりした場合には、刑法第218条の保護責任者遺棄罪が成立してしまいます。